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2016.07.15 never young beach [fam fam]tour@梅田AKASO

never young beachの2ndアルバム『fam fam』の発売を記念すべく若者が多く集った梅田AKASOで、
SEもなくふらりと先に現れたのはキセル。
静かに打ち込みの優しい音が鳴らされ、丁寧なギターが重なる。
やわらかい豪文(gt.&vo.)の歌声がすぅっと耳に澄んで入ってきた。
始まりは『ベガ』だった。
少し冷房が効きすぎていた淡白なライブハウスが、明かりが灯ったように暖かくなった。
彼らのその魔法のような演奏を、真剣に見つめる若者たちの姿が印象的だった。
”キセルです。今日は僕らのことを初めて観る人もいると思うけど、兄弟でやってて、あっちが弟。友晴。で俺が兄貴。
・・・大丈夫?(僕らが出てきて)えっ?とかなってない?こんなにいっぱいのAKASOは始めてみたよ。のまれないように頑張ります”
今度は友晴(ba.&vo.)がマイクを握り、大島弓子さんの同名の作品をもとにつくられたという『サマタイム』を歌った。
物語の中に入り込んでしまったようだった。
田舎の小さな山の初夏を進んでいく様子が描かれていて、楽しくて暖かくて、でもちょっと決意のようなものもあって、never young beachと似た空気を感じ取った。時折サポートドラムの北山ゆう子(lake)と目を合わせたり、ほほえみながら強弱をはっきりつけて演奏する姿は本当に心地よさそうだった。
そしてここでの『サマーサン』が秀逸だった。それまでの暖かい安心感を何の前触れもなく良い意味で裏切り、不穏で怪しいリズムと音に急に連れ込まれたのだった。やられたー!もう観客はキセルに興味津々だった。
”never young beachさんとは一回会ってね、それで僕らみたいなものを呼んでいただいて、ありがとうございます”と先輩ながら丁寧なあいさつに笑いが起きる。
”はっぴいえんどのカバーをしたのをきいてくれてたみたいで。ということでカバーを。はっぴいえんど全然関係ないんだけど、”
と披露したのは高田渡の『鮪に鰯』のカバー。
穏やかながらメッセージ性の強いこの曲をチョイスしたのは、ネバヤンやそのファンである若い世代に聴かせたかったのかもしれない。
ちょっと早いけど、と『ナツヤスミ』を季節感たっぷりに鳴らしてオーディエンスを揺らした。それからラストの『ギンヤンマ』があまりに美しく、またそのはかなさゆえに物悲しく、まばゆくきらめいているのに、届きそうで掴めない、やけに現実味のある夢のよう。青く照らされた光の中で泣きそうになってしまった。
”ありがとうございました”そう言ってキセルなりの夏を奏でて去った三人に、アウェイだったはずのフロアからまっすぐに感動を伝える大きな拍手が贈られた。

心地よい余韻が漂う中、本人たちがセッティングし、デベンドラが流れたらnever young beachのステージの始まりだ。
『なんもない日』でもうすぐさま、待ってました!と言いたくなるネバヤンサウンドに包まれる。
鈴木健人(Dr.)のドラムが小気味よく鳴れば『Motel』が演奏され歓声とともに思い思いに踊りだす観客を見て、安部勇磨(Gt.&vo.)も満面の笑みで声を上げ踊る。自然に起きた手拍子もグルーヴを高めていく。さらに阿南智史(gt.)のギターソロも楽しさに拍車をかけるのだった。
すっかりできあがったフロア。『ちょっと待ってよ』の少し気の抜けたイントロでも声が上がり踊りまくる。これが彼らのライブの面白いところであり、非常にその踊りだしたくなる気持ちはわかる。だって、能動的に楽しんでいこうって思わせられるんだもの。阿部もあーグッと抱いてよ!と声を荒げたり、ふぉー!と叫んだり”いい感じだね!”と興奮気味だ。
最近髪を切ったがメンバーに前の方が良かったと言われ少ししょんぼりする安部。”昨日スズケンと前のりしたんだけどさ、今日みんなにあえてめっちゃ嬉しいもん!”と言い、昨夜の鈴木とのお風呂エピソードを嬉しそうに聞いてよこいつさーと話す姿は一歩間違うと怪しいが(笑)それすらもいつものことだという感じでサラリと返答する松島晧(Gt.)に、バンドメンバーという前に友達同士、という関係性が現れていて部屋で話しているようで微笑ましい。
これまで終盤に演奏されることが多かった安部、阿南、松島3人のギターのアンサンブルが最高潮にきらきらするナンバー『どうでもいいけど』を早々に披露し、松島、阿南がそれぞれオーディエンスの方に向かい、パンパンのAKASOに力強くギターを響かせる。
”最初マネージャーがAKASOでやるって言ったとき、びっくりしちゃったよ。だって700とか、そんなに俺らで入るのって。でもみんなが来たおかげでソールドアウトだよ!ありがとう!そんなにみんな俺らのことすきだったのかぁ”とへらへら笑う安部に好き!という歓声があがる。”ソールドってことは観れなかった人もいるからね、また大阪でやるから来てね”と言って沸かせた。
”もう雨やんだ?まだふってた?”と問いかけ、やんだ!と元気な声が返ってくると”やんじゃったかー”と苦笑いで始めたのは『雨が降れば』。上手く曲につなげるMCができなかったのには笑ったが、梅雨のけだるさも夏の前の寂しさもはらんだこの曲は今回のアルバムでもいいアクセントになっていて、のびやかに歌う安部の低音がなんだか壮大でもっと大きな会場で聴きたくなった。
続いて”雨が止んだら夏が来た!”と『夏がそうさせた』をやりきり、
”キセルが出てくれてさ、ありがたいよ。一曲目にやった『ベガ』って曲が、俺生まれて史上一番くらいに好きな曲で、最初はっぴいえんどからキセルを知って、聴いたときうおお!なんだこれは!ってなった”とキセルへの熱い思いを述べた。
『自転車に乗って』『Pink Jungle House』『fam fam』とフロアのボルテージが最もあがったところで阿南が曲の入りのギターを間違えてやり直すハプニングもありブーイングに包まれたが、やっぱり『あまり行かない喫茶店で』は代表曲で、嬉しそうに飛び跳ねたり手を上げるファンたちが可愛い。
そして今回のアルバムのメインチューンと言ってもいいだろう、『明るい未来』。音源もPVもとてつもない名作なのでぜひまだの人は観て聴いてほしいのだが、ライブで聴くのが一番好きだ。非常にふわふわしっぱなしの安部が、真剣にこのストレートなラブソングを歌う姿は輝かしく、そして特別を望まず日常の当たり前を愛する幸せに、胸を打たれてたまらなくなるのだ。
ラストはイントロからときめきが溢れだす『お別れの歌』。さよならの歌なのに明るく、「いつかまた会えたら 聴いてはくれないか 陽気な歌でも歌うから 愛していたよ」という歌詞が安部らしくてグッと来てしまうんだ。メンバーもみんな最後を惜しみ出し切るような力いっぱいの演奏になるところもよりエモーショナルさを掻き立てる。大歓声があがった。
アンコールでは”2枚しかアルバムだしてないから曲が本当にないからWアンコールされてもこないだマツコが出てきて出来ません!つって終わったの(笑)これから3枚、4枚、5枚、、10枚。10枚出したら一年に1枚としても10年後、35歳だよ!・・・時の流れだねー”と笑う安部。いつまでもどんな時代が来ても、ネバヤンの音楽を聴いていたい。必要なはずだ。やり続けて欲しいよ。と今回披露した新曲も聴きながら思ったのだった。
ネバヤンのおかげで蒸し暑い午後も、かんかん照りの日差しも、なんだか好きになれた。
ただの能天気なお気楽やろうではなく、自ら本気で楽しさを見つけていくことが、生きるコツだと教えてくれる彼らの歌。
同い年の私は一緒に人生を進めていけることをとてつもなく幸福に思います。私も頑張ろうっと。



by yonayonagirl | 2016-07-17 00:53 | 音楽


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